サーチュイン遺伝子が発見された歴史|レオナルドガレンテ教授とは?

マサチューセッツ工科大学

サーチュイン遺伝子は、マサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ博士らの研究グループによって発見されました。
酵母菌から老化を抑制する遺伝子SIR2(Silent Information Regulator)を発見したことから始まり、他の生物のサーチュイン遺伝子も発見したしていきます。

この記事では、サーチュイン遺伝子が発見された経緯や歴史、発見したレオナルド・ガレンテ博士の人物像をお伝えします。

記事監修

ルサンククリニック院長
長谷川 佳子(KEIKO HASEGAWA)

北里大学を卒業後、横浜市立大学にて美容外科を研鑽。現在は形成外科医として医療を提供する傍ら、思春期の娘と男女双子を育てるワーキング女医ママとして、クリニック治療からホームケアまで情報を発信している。
ルサンククリニック(LECINQ clinic)

サーチュイン遺伝子発見の経緯

生物の寿命に関して研究のはじまりは、実は第二次世界大戦でのある出来事がきっかけです。

ドイツ軍による空爆によって、ロンドンに住む人々は多大なストレスに晒されました。
まともに食糧すら手にはいらず、市民は配給された食糧によって生き長らえていました。

多大なストレスと病気によって、ロンドン市民の死者は、大きく増えるだろうと予想されていました。

しかし実際は、予想に反して死者の数は増えませんでした。

死者が増えなかったことの原因に、ストレスや配給によるカロリー制限が関係しているのではないか?
その仮説が生物研究者たちの間で広まり、世界中でカロリー制限と生物の寿命を探る研究が行われます。
アメリカのウィスコンシン大学では、30年ほど前からアカゲザルをカロリー制限して飼育し、健康寿命との関係を探っています。

8年かけてサーチュイン遺伝子を発見

1991年、当時39歳でまだ駆け出しの生物学者だったガレンデ教授ですが、長寿に関係する遺伝子を探す研究を始めます。

ガレンデ教授世界大戦の空腹の事例や、虫の遺伝子の突然変異が寿命を伸ばすという事例から、寿命を決める遺伝子が存在すると予想していました。

研究対象として選んだのは、酵母菌は細胞が1個しかなく、20回〜30回ほど細胞分裂すると一生を終える酵母菌でした。
ヒトの60兆個の細胞に比べて原始的で扱いやすく、研究対象とするにはぴったりの生物でした。

研究開始から8年間の苦労の末、ついにガレンテ教授はサーチュイン遺伝子を発見することができました。

この歴史的な発見はアメリカのテレビ局に大きく報道され、当時のガレンテ教授も誇らしげにインタビューに答えています。

他の生物でも老化のメカニズムを探る

「酵母菌で見つけたサーチュインは、酵母菌だけにあてはまるのかもしれない」
そんな疑問に答えるべく、ガレンテ教授は線虫やマウスなど、他の生物にもサーチュイン遺伝子があるかどうか探ります。

結果的に、線虫、ショウジョウバエ、マウスそれぞれでサーチュイン遺伝子が見つかります。
遺伝子操作によってサーチュインを活性化させると、寿命が伸びることがわかりました。

最終的にヒトの細胞にもサーチュイン遺伝子が存在することがわかり、現在に至ります。

レオナルド・ガレンテ教授はどんな人物?

サーチュイン遺伝子を発見したレオナルド・ガレンテ(Leonard Guarente)教授は、190以上の論文を発表し、”Ageless Quest”という本を出版しています。
LIFE SPAN(老いなき世界)の著者デイビッド・シンクレア教授は弟子にあたり人物であり、共同で長年研究を行っています。

企業と研究者のバランスを重視

ガレンテ博士は、バイオベンチャー企業「エリクサー社」を立ち上げています。
大学の博士がベンチャー企業を立ち上げるケースは特殊で、「研究室の意思決定に企業が介入するべきではない」というコメントを残しています。
ガレンテ博士は「バランス」を非常に大事にする人物で、科学を追求する研究室と、利益を追求する企業は明確に区別すべきだと主張しています。

自身はカロリー制限を行なっていない

カロリー制限によって酵母菌の寿命が延びることを発見したガレンテ博士ですが、自身の食生活ではカロリー制限を行なっていません。
「その理由は、カロリー制限をした知人がかなりみじめなことになっているのを知っているからです。」とコメントを残しています。

食事を制限すると、体温の低下、性欲の減退、食事を楽しめないなどの弊害があります。
それはとても理にかなったことではないと、ガレンテ博士は言います。

カロリー制限は、あくまで「控えめ」程度にし、野菜やナッツ類を多く食べ、運動をする生活習慣が重要だと言います。

「飲むだけでもともと健康な生活を送っている人びとよりも長生きできるような薬はありえないと思います。生活習慣こそが重要です。」
レオナルド・ガレンテ 「長寿遺伝子」を解き明かす p62-63

サーチュイン遺伝子の発見まとめ

  • サーチュイン遺伝子は2000年にレオナルド・ガレンテ博士によって発見された
  • 研究のきっかけになったのは第二次世界大戦
  • カロリー制限や薬よりも生活習慣が何より大事

サーチュイン遺伝子の活性化には、NMNやNRなどのサプリメントが役立ちますが、ガレンテ博士の言う通り生活習慣が何より大事です。
運動する、バランスよく食べるなどの生活習慣をきちんとした上で、サプリメントでエイジングケアに磨きをかけましょう。

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