7種類のサーチュイン遺伝子の特徴|老化の仕組みをわかりやすく解説

サーチュイン遺伝子 嘘

サーチュイン遺伝子には7種類あると言われていますが、それぞれどんな特徴や機能があるのでしょうか?
また、なぜ老化の進行を抑えると言われているのでしょうか?

そんな方のために、7種類のサーチュイン遺伝子の特徴や、老化の仕組みをわかりやすく解説します。
この記事を読めば、老化の仕組みやサーチュイン遺伝子の働きがすっきりと理解できます。

記事監修

辻沢 由有(TSUJISAWA YUU)

美容外科・美容皮膚科クリニックBIANCA表参道院長。
順天堂大学附属順天堂医院にて形成外科・皮膚科・麻酔科を研鑽。公式YouTubeチャンネルでは、敷居が高く感じられがちな美容医療について、初心者にもわかりやすく解説している。

7種のサーチュイン遺伝子の役割と名前

サーチュイン遺伝子は哺乳類では7種類見つかっており、全て合わせて「サーチュインファミリー」と呼ばれています。
それぞれ細胞内で存在する場所が違い、老化や寿命、糖代謝など、様々な生体機能をコントロールしています。

Sirtuin局在機能
SIRT1
細胞質
コレステロール調整(肝臓)
脂肪酸動員、アディポカイン制御(白色死亡細胞)
脂肪酸酸化(骨格筋)
インスリン分泌
心臓発生
血管緊張/拡張、血管新生、細胞老化(血管内皮細胞)
細胞老化(血管平滑筋)
神経保護(脳)
Notchシグナル経路の制御(個体発生時)
SIRT2
細胞質
チューブリンの脱アセチル化
脂肪分化(3T3-L1細胞)
SIRT3ミトコンドリアミトコンドリアタンパク質の脱アセチル化によるATP合成
(肝臓、心臓、腎臓)
SIRT4ミトコンドリアインスリン分泌(膵β細胞)
SIRT5ミトコンドリア尿素サイクル(肝臓)
SIRT6塩基除去修復
DNA二本鎖損傷修復
解糖系、中性脂肪産生制御(肝臓)
SIRT7Pol転写制御
心臓発生
哺乳類Sirtuinの主な機能

発見の経緯は酵母菌

老化研究の第一人者であるレオナルド・ガレンテ教授(マサチューセッツ工科大学)は、カロリー制限と人間の寿命に何らかの関係があると予想していました。
人間を対象にした実験を行うと膨大な時間と費用がかかってしまいますが、細胞が1つしかなく寿命も短い酵母菌で研究を行なっている際に、サーチュイン遺伝子を発見します。

名前の由来はSir2サーツー遺伝子

酵母菌で見つかった寿命に関係する遺伝子は「Sir2」(サーツー)呼ばれる酵素でした。
(※ Sir2:silent information regulator-2 サイレント情報調節因子-2)

その後哺乳類でも寿命に関する遺伝子が続々発見され、サーチュインをSIRT1〜SIRT7と呼ぶようになりました。

呼び方にそれぞれ数字が入っていて複雑なのですが、酵母菌のサーチュインをSIR2と呼び、哺乳類のサーチュインをSIRT1~SIRT7と呼びます。
なお、Sir2とほぼ同じ働きを持つのがSIRT1です。
SIRT1はサーチュインの中でも特に重要な遺伝子と言われており、多くの機能のスイッチとなることから、細胞の「指揮者」と呼ばれています。

サーチュイン遺伝子?酵素?
呼び方の違い

呼び方が混同してしまいがちなのですが、サーチュイン酵素もサーチュイン遺伝子も、両方とも存在します。
これは遺伝子が酵素を作り出す仕組み(セントラルドグマ)に由来するもので、サーチュイン遺伝子からサーチュイン酵素が作られるという仕組みだからです。

セントラルドグマ 
サーチュイン遺伝子によってサーチュイン酵素が生まれる
DNAから酵素が生まれる流れ(セントラルドグマ)

老化の制御や炎症の抑制、ミトコンドリアの新生など、サーチュインの働きと呼ばれるものは全てサーチュイン「酵素」が行なっています。
このサーチュイン酵素を生み出す設計図の役割をするのが、サーチュイン「遺伝子」になります。

「サーチュイン」と書かれた場合、酵素と遺伝子、どちらを指しているかは文脈から判断します。
(そもそも区別していない場合や、どちらでも意味が通ることも多いです。)

文字の書き方で区別する慣習もあり

  • SIR2のような大文字イタリック → 遺伝子自体
  • Sir2のような小文字 → 遺伝子から作られるタンパク質(酵素)

を指しています。

老化のメカニズムとサーチュインの働き

サーチュインが持つ重要な役割の一つに、ヒストン脱アセチル化(HDAC:Histone Deacetylase)があり、
老化や寿命に深く関係するとされています。
LIFE SPAN(老いなき世界)の著者デイビッド・シンクレア教授の説に基づいて、老化のメカニズムとサーチュインの働きについてお伝えします。

ヒストンとは?

細胞には染色体があり、染色体はクロマチン構造が並んでいる。クロマチンでは、ヒストンにDNAが巻きついている

人の体は約60兆もの細胞からできています。
細胞をどんどんクローズアップしていくと、細胞の中には細胞核があり、細胞核の中には染色体が入っています。
染色体をさらに拡大していくと、丸い玉に糸が巻きつけられたものの集まりであることがわかります。(クロマチン構造)
丸い球はヒストンと呼ばれ、珠に巻きついているのがDNAです。

全長2mにおよぶ長いDNAの糸は、ヒストンに巻きつくことによって細胞内で小さく収納されています。

このヒストンとDNAが老化のメカニズムに深く関わっていると言われています。

エピジェネティクスとは

細胞には、心臓でも肺でも全て同じDNAが入っていますが、同じ細胞でも体の部位ごとの働きは全く違います。
細胞には全く同じDNAが入っているのに、なぜそれぞれ違った役割を果たすことができるのでしょうか?

それは、DNAには読みとりできる部分と、読み取りできない部分があるからです。

DNAには、膨大な遺伝子情報が書き込まれており、生物として活動するために必要な情報が入っています。
心臓と肺ではそれぞれ働きが違うため、必要な情報も違います。

エピジェネティクス
DNAの読みとりが可能か不可能かによって、細胞の役割が決定される

もし肺の細胞であれば、肺に必要な情報のみを読み取り可能にしておき、他の情報は読み取り不可能な状態にしておくことによって、肺細胞としてのアイデンティティを確立させています。

このような、読み取り可能・不可能まで含めたDNAの情報を「エピゲノム」といい、エピゲノムによって細胞の役割を決める仕組みをエピジェネティクスと呼びます。

巻きつきの緩急によってエピゲノムが決まる

ヒストンとエピゲノム
DNAの巻きつきが緩むと遺伝情報が読み取り可能になる
巻きつきが締まると、DNAから遺伝情報が読み取れなくなる
ヒストンの締め付けとエピゲノムの読み取り

染色体は、ヒストンの球にDNAの糸が巻きついた構造が連なっていますが、DNAの糸にはヒストンへの巻きつきがきつい所とゆるい所があります。
DNAの読み取り可能・不可能は、この「巻きつきの緩急」によって決定されています。
巻きつきがきつい箇所のDNAは読み取りできませんが、巻きつきがゆるい箇所のDNAは読み取れます。

具体的には、巻きつきがゆるい所には、アセチル基と呼ばれる目印がヒストンについています。
巻きつきがきつい箇所には、ヒストンにアセチル基がついていません。

人の体は、ヒストンへのアセチル基を付加・除去を調節することによって、細胞のアイデンティティを確立させているのです。

老化の原因は巻きつきの調整不足?

細胞ごとのアイデンティティは、年齢とともに失われていくことが知られています。

老化のメカニズムはヒストンの緩み
ヒストンのDNAへの巻きつきは自然に緩み、遺伝子情報の可読部が乱れた状態を老化細胞と呼ぶ。
老化細胞の割合が増えると、臓器などの機能が低下する

ヒストンへの締めつけは次第に緩んでいき、不要な情報まで読み取り可能になると、細胞が正しい働きをしなくなります。
このようなアイデンティティを失った細胞を老化細胞と呼び、老化細胞が増えることで臓器や皮膚、筋肉などの全体としての機能が低下していきます。

これが老化の正体であると、シンクレア教授は述べています。

サーチュインのヒストン脱アセチル化の働き

サーチュインは、DNAのエピゲノム情報を正しく調整する役割があると期待される酵素です。
サーチュインには、ヒストンのアセチル基を取り除くことで、緩んでしまったヒストンへのDNAの巻きつきを締め直します。

サーチュインが老化を抑える仕組み
サーチュイン酵素がヒストン脱アセチル化によって、ゆるんだヒストンの巻きつきを締め直す。可読部になってしまったDNAが読み取れなくなることで、遺伝子情報が調整され、老化細胞が若返る。

するとDNAの読み取り可能・不可能がよりハッキリと区別されるため、細胞のアイデンティティが保たれ、老化細胞が生まれにくくなります。

サーチュイン遺伝子は、普段は十分に機能しておらず、半ば眠ったような状態です。
しかしスイッチが入ることによって、サーチュイン遺伝子がサーチュイン酵素を作るようになり、サーチュイン酵素が細胞内部を巡回するようになります。
体内を巡回するサーチュイン酵素の数が増えれば、いたるところでDNAの修復が行われるため、老化細胞の発生が抑制されます。

長寿に関する他の遺伝子

サーチュイン遺伝子以外にも、寿命に関係する遺伝子は見つかっています。

遺伝子およびタンパク質
(ヒトの場合)
実験した生物と寿命の延び遺伝子のタイプ
Sir2(SIRT1)酵母菌、線虫、
ショウジョウバエで30%
長寿遺伝子
TOR酵母菌、線虫、
ショウジョウバエで30〜250%
長寿抑制遺伝子
daf / FoxO
(インスリン/IGF-1)
線虫、ショウジョウバエ
マウスで200%
長寿抑制遺伝子
Clock
(補酵素Q遺伝子)
線虫で30%長寿抑制遺伝子
Amp-1
(AMPK)
線虫で10%長寿遺伝子
P66Shc
(P66Shc)
マウスで27%長寿抑制遺伝子
klotho
(klotho)
マウスで18〜31%長寿遺伝子
長寿に関する他の遺伝子
参考:日経サイエンス2006年5月号

サーチュイン遺伝子のようにスイッチがオンすることによって寿命が延びる長寿遺伝だけでなく、スイッチがオンになると老化を促進する「長寿抑制遺伝子」もあります。
特に、TOR(哺乳類の場合はmTOR)はオートファジーの発生と深く関わっているため注目されています。

まとめ

サーチュイン遺伝子は哺乳類では7種類あることが知られており、それぞれがヒストン脱アセチル化の機能を持ちます。
老化のメカニズムはエピゲノム情報の喪失と考えられており、サーチュイン遺伝子はエピゲノム情報を保存する働きがあるとされています。

エピゲノムの保存を人間に適用させれば、サーチュインを働かせることで老化の進行を遅らせ、寿命を伸ばすことができるかもしれません。

メカニズムが完全に解明されるまで数十年かかる可能性もあり、そこまで老いは待ってはくれません。
エイジングケアがしたい方は、運動や断食など、無料で始められる方法で体がどのように変わっていくか実感してみましょう。

また、既にアメリカでは人気になっているサーチュインを活性化するためのサプリメント(レスベラトロールやNMNなど)などを続けてみるのも良いでしょう。

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