「若返り薬」と注目されているのNMNには、薄毛や抜け毛にも効くのでしょうか?
結論から言うと、NMNが薄毛・抜け毛に有効か調べた研究は報告されていないため、薄毛や抜け毛への効果はまだわかりません。
しかし、NMNによって長寿遺伝子と言われるサーチュイン遺伝子のスイッチが入ると、人体に様々な影響が出ます。
薄毛の原因となる活性酸素の除去や、サルを対象にサーチュイン遺伝子を活性化させた実験では毛並みのツヤがよくなっているという結果も出ているため、薄毛に効果がある可能性があります。
薄毛や抜け毛に悩む肩に向けて、NMNの効果や、予想される働きについてお伝えします。
ルサンククリニック院長
長谷川 佳子(KEIKO HASEGAWA)
北里大学を卒業後、横浜市立大学にて美容外科を研鑽。現在は形成外科医として医療を提供する傍ら、思春期の娘と男女双子を育てるワーキング女医ママとして、クリニック治療からホームケアまで情報を発信している。
ルサンククリニック(LECINQ clinic)
NMNの薄毛に対する効果は実証されていない
若返りや不老の効果があると期待されるサーチュイン遺伝子ですが、そのスイッチを入れるためにNMNという成分が注目されています。
「細胞レベルで若返ることによって、薄毛や抜け毛も改善されるのでは?」と期待したくなりますが、人間を対象にNMNの効果を調べた実験はまだあまり数が多くありません。
そのため、現時点ではNMNが薄毛・抜け毛に有効と断言することはできません。
しかし、薄毛や抜け毛への効果が期待できる理由がいくつかあります。
サーチュインで毛並みが良くなる
こちらの写真は、アメリカのウィスコンシン大学が行ったアカゲザルの比較実験の結果です。
30%のカロリー制限したアカゲザルと野生のアカゲザルをそれぞれ別で飼育し、数十年にわたって経過を観察しています。
その結果、カロリー制限をしたアカゲザルの方が
- 毛並みや肌ツヤが良くなる
- 姿勢や見た目が若々しくなる
- 加齢による死亡率が低くなる
といった傾向が見られ、サイエンス誌に投稿とされると同時に大きな反響を呼びました。
食事制限によってサーチュイン遺伝子が活性化し、老化の進行が抑制されたのではないかと予想されています。
注意点としては、こちらのアカゲザルの実験ではNMNを投与したわけではありません。
サーチュイン遺伝子は様々な方法でスイッチを入れることができますが、NMNも食事制限もそのうちの1つの方法です。(サーチュイン遺伝子は、食事制限、運動、暑さや寒さなどでも活性化することが知られています。)
食事制限によって毛並みがよくなったのか、または運動や寒さなど、他の要因があるのか。
何らかの生活習慣が寿命を伸ばし、毛並みや肌ツヤを良くしたと予想されています。
活性酸素を減らすオートファジー
薄毛や抜け毛の原因として、頭皮環境の悪化があります。
中でも体内で自然と生まれてしまう活性酸素からのダメージは深刻で、頭皮の細胞を傷つけ、薄毛や抜け毛を引き起こします。
活性酸素を除去するメカニズムをオートファジーといい、オートファジーが行われることで活性酸素を生み出す古い細胞が除去され、新しい細胞に生まれ変わります。
実はオートファジーの発動にはサーチュイン遺伝子が深く関係しています。
人の細胞に存在する7つのサーチュイン遺伝子(Sirt1~7)のうち、Sirt1がオートファジーを指揮していると言われています。
NMNでサーチュイン遺伝子を活性化することでオートファジーが起こります。
オートファジーによって活性酸素が減れば、頭皮環境が改善され、抜け毛・薄毛にも効果が期待できるかもしれません。
薄毛・抜け毛へのNMNの効果まとめ
NMNと薄毛や抜け毛への関係は解明されていないので、現段階では薄毛対策を目的にNMNサプリを飲み始めるのは時期尚早と言えます。
しかし、最近ではNMNを美容目的で始めている人も少しずつ増えています。
サーチュイン遺伝子の活性化は幅広いメリットがあるので、薄毛や抜け毛にも良い影響を与えるかもしれません。
美容・健康目的でまずは1ヶ月程度試してみて、頭皮の様子を見てみるのが良いでしょう。