長寿遺伝子と呼ばれるサーチュイン遺伝子は、糖尿病の改善効果が期待されており、既に動物実験ではサーチュイン遺伝子が2型糖尿病の改善が示唆されています。
この記事では糖尿病が心配な方に向けて、サーチュインが糖尿病を改善する可能性についてお伝えします。
ルサンククリニック院長
長谷川 佳子(KEIKO HASEGAWA)
北里大学を卒業後、横浜市立大学にて美容外科を研鑽。現在は形成外科医として医療を提供する傍ら、思春期の娘と男女双子を育てるワーキング女医ママとして、クリニック治療からホームケアまで情報を発信している。
ルサンククリニック(LECINQ clinic)
2型糖尿病とサーチュインの関係
世界的に糖尿病の罹患率が増える中、2型糖尿病の改善にサーチュインの活性化が大きな期待を寄せられています。
サーチュイン遺伝子は複数あり、哺乳類では7種類のサーチュイン(Sirt1〜Sirt7まで)が見つかっています。
この中で、糖尿病と関係が深いとされているのがSirt1です。
Sirt1が2型糖尿病改善を示唆
マウスを使った実験で、サーチュイン遺伝子(Sirt1)がインスリン分泌を間接的にコントロールしていることが示されました。
参考:Sirt1 regulates insulin secretion by repressing UCP2 in pancreatic beta cells.
まだ人間を対象とした検証は行われていませんが、Sirt1をコントロールすることでインスリン分泌を制御することができれば、2型糖尿病の改善が見込めます。
糖尿病の治療薬ではできなかった長期間にわたる血糖値のコントロールが、サーチュインによって可能になるかもしれません。
Sirt1が糖尿病以外の機能を指揮
Sirt1の生体への影響は幅広く、糖尿病(インスリン分泌)以外にも
- 脂質/グルコース代謝調整
- ミトコンドリア生合成
- 炎症の抑制
- オートファジー誘導
- サーカディアンリズム調整
- 細胞ストレス適応
- アポトーシス抑制
- 遺伝子サイレンシング誘導
など、さまざまな人体のメカニズムをコントロールしています。
そのため、Sirt1を「楽団の指揮者」と呼ぶ研究者もいます。
参考:SIRT1 in Type 2 Diabetes: Mechanisms and Therapeutic Potential
糖尿病によって他の病気を併発してしまった場合でも、サーチュイン遺伝子を活性化することで、様々な合併症への効果も見込めるかもしれません。
NMNによる糖尿病患者のフレイル改善
NMNはニコチンアミドモノヌクレオチドと呼ばれる成分で、サーチュインを活性化できることが動物実験で明らかになりました。
NMNと糖尿病改善の関係についてはまだ正確な成果は発表されていませんが、2021年2月に終了した大阪大学の研究が注目されています。
2型糖尿病患者を対象に行ったこちらの研究では、糖尿病によって虚弱化した男性の身体能力が、NMNの投与で改善されたことが報告されています。
試験内容 対象:2型糖尿病患者 | 観察結果 |
---|---|
プラセボ投与 | ・変化なし |
NMN投与 (250mg 6ヶ月) | ・握力改善 ・歩行速度改善 ・大きな副作用なし |
このように、サーチュインを活性化するNMNは、糖尿病やその合併症の改善に大きな期待が寄せられています。
糖尿病のリスクと兆候
糖尿病は、過剰な糖が体を内側から蝕んでいく、恐ろしい病気です。
糖尿病を放置すると、肌がカサカサになり老化を促進するだけでなく、様々な疾病を併発するリスクがあります。
70歳以上の男性の約4人に1人が糖尿病予備軍
実は、日本人は糖尿病患者の割合が多い特徴があります。
診断するまでに至らない「糖尿病予備軍」の割合も多いのが恐ろしいところです。
令和元年に行われた調査では「糖尿病が強く疑われる者」の割合は男性19.7%、女性10.8%でした。
50歳を超えたあたりから急激に増え、70歳以上の男性では約4人に1人が糖尿病の予備軍となっています。
食後のだるさや眠気が糖尿病のサイン
糖尿病の疑いがあるサインは、食事をしたあとに感じる眠気やだるさがひどくなることです。
食べすぎると血糖値が急に上がり、血糖値を下げるために膵臓がインスリンを過剰に出します。
以前と比べて、昼食後に感じる眠気やだるさがひどくなったと感じる人は注意が必要です。
サーチュインを活性化するNMN
「糖尿病も気になるし、健康のためにサーチュインを活性化させたい」
と思った時に、どのような方法でサーチュインを活性化すれば良いのでしょうか?
代表的な方法として、カロリー制限があります。
16時間連続の断食を行う「間欠的断食」を行うことで、体が飢餓状態になり、サーチュインが活性化すると言われています。
参考:16時間の断食でサーチュイン遺伝子が活性化
他にも、凍える寒さや激しい運動など、体がストレスを感じるとサーチュインが活性化することがわかっています。
参考:サーチュイン遺伝子を運動で活性化する方法
参考:サーチュイン遺伝子は寒さで活性化する?
このように、サーチュインの活性化にはストレスが伴うことが特徴です。
しかし、長期間にわたる間欠的断食や激しい運動の継続は、体に負担がかかりまし気持ちも長続きしません。
その解決策として期待されるのが「NMN」です。
NMNはアメリカを中心にサプリメントを飲む人が増え、日本でも2020年から販売が本格化しました。
NMNと糖尿病の改善に関してはまだまだ研究段階ではあるものの、研究が進めばその効果が徐々に明かされるでしょう。
2型糖尿病の症状にお悩みの方は、NMNを試してみてはいかがでしょうか?